ケン&ハリー・ウォーター
もうひとつのストーリー
残念ながらカットされてしまいましが、本編
には「若き日のケンとハリーのエピソード」
シーンがありました。
完成版では、小人俳優ジミーとのパーティー
シーンの会話で、ほんの少し登場するだけにとど
まった、ケンの妻が殺された日のエピソードです。
カットされたシーンでは、若き日のレイフ・
ファインズ役を、今をときめくマッド・スミス
が演じていただけにつくづくカットが惜しい!
他にカットされたシーンには、子供時代の
ハリーが父親に連れられてブルージェを訪れる
シーンもいつくかありました。
シーンの中では、少年時代のハリーが白鳥
(!)を見たり、ベルタワーに登ったりする
のですが、はしゃぐ彼に対して、父親は終始
息子にそっけない。
別のカットシーンには、決闘の為にブルージェ
を訪れたハリーが、少年時代を思い出しつつ、
運河を眺めるシーンがあります。ベンチにテディベア
を見つけて思わず手に取りますが、そのぬいぐるみ
の首が取れているという印象的なシーンです。
これは、先にカットされた「ハリーが警官の首を
はねた過去の象徴」だけでなく、もちろん後のハリー
自身の運命を示唆しています。
しかし、このような重要なエピソードがカット
されていても、そのキャラクターの隠された
人生の部分を、言葉にせず背負って表現できる
俳優たちのおかげで、映画がバラバラになった
りはしていないのが凄いところ。
そして最後にコリン・ファレルです。
ケンとハリー、この二人の絆と歴史を変えさせる
だけの理由を、レイというキャラクターが与えられ
るかどうか。
この男の為なら、命をかけてもいいと思える人物
を作り上げられるかどうか。そして、観客の心をも
動かさなくてはならいキャラクターなのです。
コリン・ファレルの手腕はぜひ、映画で体験してください。
この映画がレイフ・ファインズの登場
から調子付くのにはちょっとした訳があります。
どの傑作映画にもヒーローが存在します。
一見コミカルな場面ばかり印象に残りまします
が普通の常識からおおいに外れたハリーはこの
映画の超人めいたコミック的ヒーローなの
です。
ハリーの登場は、前半のエピソードを通して
すでに観客に馴染みとなった二人のヒットマン
コンビに入りこんで安易な三角関係を作るのでは
なく、映画の中にもう一つの新しいコンビを作っ
てしまうのです。
さて、前半映画はわりと静かにすすんでい
きますが後半「ボス」が登場してから映画は
一気に活気づきます。
映画の途中まで登場をひっぱっただけあり、
「ボス」レイフ・ファインズの登場で、この
映画のおかしさはノンストップ。
クールで、オリジナルで、思わず噴き出して
しまうようなキメ台詞の連続で、一時も、
目も耳も離せません!
ちょっと下品な表現が多いけれど、密か
に自分で言ってみたくなってしまうセリフ
ばかり。まさに映画に釘付けにしてくれる
ので、レイフ・ファインズが登場する後半
からは、思う存分この映画に翻弄されて欲し
い!