ヒットマンズ・レクイエム レビュー Page2
ヒットマンズ・レクイエムの世界観
ヒットマンズ・レクイエムを見ていて、アイルランド人のお話
にもかかわらず、歌舞伎の世界を思い出してしまいました。
歌舞伎というのは悲劇であっても、コミカルなシーンが多い
ものですが、ヒットマンズ・レクイエムも「悲劇であり、同時に
コメディーである」タイプの映画なのです。
重いお話なのでコミカルなセリフでバランスを取っている
というよりも、監督の物事を見る独特のセンスが”シリアスな
シチュエーションの中のユーモア”という形で作品に現れて
いるのでしょう。
★ 極道に入ったものの、悪人になりきれない主人公、
★ 命を張って弟分を守ろうとする殺し屋、
★一見上品そうでも裏街道人生を恥ともしない強いヒロイン、
★ 命をかけて仁義を通そうとするボス、
どうです?文章だけ読むとまるで歌舞伎ですよね。
こんな歌舞伎の中にしか存在しなくなったような古くさい人物達
が生き生きと活躍してくれる安心感がこの映画にはあるのです。
そして、見終わった後は、そんな古くさい登場人物たちが、
現代人たちよりもずっとリアルに、ずっと愛おしく感じてしまう、
そんなトラップにはまってしまいました。
彼等にまた会いたくなったら、私たちの向かう先はダブリンではなく、
もしかしたら歌舞伎座だったりするのかもしれません。
印象深いセリフ回し
ヒットマンズ・レクイエムと歌舞伎の共通点をもう一つ。
この映画でも、もちろんマクダノー監督作品の中で度々現れる独特の
セリフ回しがたっぷりと味わえます。例えば彼の作品には印象的な
リズム感を生むため、同じセリフを3回繰り返すセリフ回しが多いのですが、
これが、あまりセンスのない俳優がこの手のセリフを読むと単調になるか、
しらけて聞こえてしまうのです。
しか〜し!!今回はレイフ・ファインズやコリン・ファレルなどなど、いえ、
出演者全員がベテラン&秀才ぞろいですから、それはかえって腕の見せ所。
各俳優が、マクダノー監督のセリフ回しをどんな風に料理してくれるのか。
観客は、有名レストランでどんな料理を堪能させてもらえるのか、ただ
リラックスして任せるというような贅沢をこの映画で楽しめるのです。
同じく歌舞伎でも、セリフの並べ方から生まれるリズムやサウンド感は
大切な演出。
同じ演目が代々繰り返される歌舞伎が、なお観客を惹きつける理由も、
マクダノー作品と同じように考えぬかれた作品のリズムにあるのかも
しれません。
ストーリーを知っている作品でも、、何度も繰り返し見返したくなるのは、
作品にセリを通して音楽のような心地よさがあるからかもしれない、と
ヒットマンズレクイエムを楽しみながら、気づきました。
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